自ら立ち上げた「給食カフェはな結」において、店舗運営の体制を見直しと改善を行った事例です。オープン後に直面した「忙しいのに利益が出ない」という課題に対し、数字の管理と現場の効率化を実践。コロナ禍、過疎地、豪雪地帯という厳しい立地条件の中で、売上を安定させる運営ノウハウを整えていきました。

データ分析、メニュー改善、現場の工夫

1. プロジェクト概要

店舗名: 給食カフェはな結(はなゆい) ※現在は「フードビジネス開発拠点(キッチンスタジオ)」として展開

◆場 所: 福井県若狭町(若狭熊川宿・重要伝統的建造物保存地区/日本遺産プレミアム認定)

◆改善内容

  1. 数字の改善: データ分析で「なんとなく経営」を卒業する
  2. 商品開発:データに基づいた、利益を作る新メニュー
  3. 現場の改善: メニューの絞り込みとレイアウト改善による効率化
  4. 人材の即戦力化: 未経験者でも迷わず動ける環境とマニュアル作り
  5. 攻めの経営: 閑散期をチャンスに変える商品作りと販路開拓

2. 課題・解決策・結果(改善プロセスのステップ)

【数字の改善】データ分析で「なんとなく経営」を卒業する

  • 課題: 日替わり・週替わりランチにこだわった結果、毎日深夜まで仕込みに追われ、来店数の予測も難しかったため食材ロスが多発。初期の実際原価率は60%を記録した。連日満席や売り切れになるものの、客単価が低いため一生懸命働いても利益が残らず、経営を圧迫していた。さらに、週1日の定休日も営業中に対応できない仕込みや事務作業に追われ、実質休みがない状態だったため、運営体制や経営改善を考える時間が取れないことが課題だった。
  • 解決策: 売上と客数の動きを正確につかむため、エクセルを用いた日報(天気、売上、客数、注文内容など)の記録を毎日実践。あわせて日・週・月ごとの作業スケジュールを洗い出し、思い切って定休日を週2日に変更。すべてのメニューの原価、利益、価格設定を一から見直した。
  • 結果: 日報データから客数の予測が立てられるようになり、計画的な仕込みによって食材ロスと品切れの双方を解消できた。また、どの商品がお客の利益を支えているかが一目で分かるようになり、主力商品に力を注ぐ体制へシフト。結果、実際原価率は60%から35%へ下がり、安定して利益が出るお店に変わった。実質休みなしの状態から抜け出したことで、労働時間も約2分の1になり、経営改善に向けた計画をじっくり立てる時間を確保できるようになった。
エクセルを用いた日報
ランチ・カフェ・テイクアウトで賑わう店内の様子

【商品開発】データに基づいた、利益を作る新メニュー

  • 課題: 日報データの分析を進める中で、カフェタイムの客数と売上が落ち込んでいることが分かった。既存のランチメニューだけでは午後の集客につながらず、スタッフやお店の空き時間をうまく活かせていないことが課題だった。
  • 解決策: カフェタイム向けの新メニューを実際に店舗へ導入。店舗のコンセプト(給食カフェ)に合わせ、揚げパンを活用し利益を残しやすい「くまパフェ」や、地域食材を活用し調理の手間が少ない「クリームソーダ」などのドリンクメニューを加えた。また、店舗用のお店のぼり旗を外に設置する対策や看板商品である「揚げパン」のテイクアウト販売にも力を入れた。
  • 結果: のぼり旗による路面からの視認性が高まったことで、午後の来店数が劇的に増加。ターゲット層に喜ばれるメニューを用意したことで、カフェタイムの集客に成功。「ランチタイム」と「カフェ・テイクアウト」のどちらでも売上を作れる体制が整った。通常営業期における全注文数のうち、これらカフェメニュー・ドリンク・テイクアウトが6割以上を占めるまでに成長。原価を低く抑えられるメニューが売上の柱の一つとなったことで、客単価が上がり、お店全体の利益アップにつながった。
視認性を高め来店数を増やしたのぼり旗

【現場の改善】メニューの絞り込みとレイアウト改善による効率化

  • 課題: お客様に喜んでもらおうと豊富に揃えていた料理やデザートが、選択肢が多すぎてお客様が注文に迷う原因になっていた。また、調理工程がまとまらず料理を出すまでに時間がかかっていたことや、客動線と作業動線が複雑に交差し移動距離が1日1万歩を超え、体力の消耗とお客さんの回転率が上がらないことが課題だった。
  • 解決策: 料理を出すスピードと席の回転率を上げるため、メニューをABCの3種類に絞り込み。一番注文してほしい看板メニューを中央(B)に置いた新しいメニュー表の作成を行った。また、お客様の「来店・注文・会計」の流れと、厨房の「調理・盛り付け・提供」の流れがシンプルに交差しないよう、冷蔵庫、食器、レジなどのレイアウトを変更し、最短距離へと動線を整えた。
  • 結果: お客様の迷う時間が減って注文がスムーズになり、料理を出すまでの時間は従来の2分の1へ短縮された。移動歩数も3分の1に減り、ランチのピーク時の回転数は1回転から3回転へ向上。メニューを絞ると同時に価格も見直したことで、サービスの質を落とさずに、営業日の売上と利益をしっかり伸ばすことができた。
メニューを絞り込み、レイアウトを改善

【人材の即戦力化】 未経験者でも迷わず動ける環境とマニュアル作り

  • 課題: オープン初期は飲食経験のある知り合いに頼る運営になっており、未経験者への教え方が決まっておらず属人化(その人にしかできない状態)していた。そのため、人件費を抑えたい暇な時期の少人数運営と、忙しい時期のチーム運営のどちらの状況にも無理なく対応できる環境作りが課題となっていた。
  • 解決策: 学校給食現場でのマネジメント経験を活かし、現場で実践。誰がどのポジションに入っても同じ味やサービスを提供できるよう、バックヤードの整理整頓(5S)を行い、食材、食器、カトラリーなどを分かりやすく配置。未経験のアルバイトでもすぐに作業を覚えられるよう、具体的な数字を入れた分量表、写真、チェックリストを作成し、誰でも動けるマニュアル体制を構築した。
  • 結果: 仕事を教える時間が大幅に減り、初日からスムーズに業務に入れる環境が整った。特別な経験がなくても回せる体制ができたことで採用がしやすくなり、最終的に20名以上のスタッフが活躍。一人の時間帯でもサービスの質を落とすことなく、人手不足や急なシフト変更にも慌てない強いお店作りが実現した。

【攻めの経営】閑散期をチャンスに変える商品作りと販路開拓

  • 課題: コロナ禍による外出自粛の影響で、店内飲食の営業が厳しく制限される時期があった。さらに、お店がある場所は観光地であり、季節変動や周辺環境の影響を受けやすく、冬場は特に豪雪で来店客が激減し、実店舗だけでは大幅な赤字になってしまう立地リスクを抱えていた。
  • 解決策: お店でお客様を待つだけの営業スタイルを改め、外へのアプローチを開始。各販路先への交渉と販売を行い、県外イベントへの出店や看板商品「揚げパン」の卸売用の商品作りを進めた。さらに、冬場を、次の春に向けた種まきの期間と位置付け、近隣の公的機関などへの交渉を重ね、あえて雪が溶けるまでの期間限定とした手作りお弁当事業を立ち上げ、調理・製造を行った。
  • 結果: 外部への販売では、毎回ほとんどが完売し、店舗以外の安定した収入源を作ることに成功。お弁当の販売先は10カ所以上へ拡大した。お弁当をきっかけに味を知ってくれた地元のお客様が、春の観光シーズンに実店舗へ足を運んでくれるケースが増え、冬場の売上を確保するだけでなく、次のシーズンの新規顧客を呼び込む理想的な循環を作ることができた。
道の駅での卸販売
完全予約制お弁当の戦略チラシ

3. 最後に

このプロジェクトを通して実感したのは、「理想だけではお店は続けられない」という現実、そして「専門家のアドバイスを正しく現場に落とし込むことの重要性」です。ピンチのときこそ、客観的なデータをもとに無理のない仕組みを作っていくことが、ここ結(ここゆい)の強みでもあります。

「日々の業務に追われて経営の改善にまで手が回らない」「真面目に頑張っているけれど、利益が残らない」……。そんなお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。ここ結(ここゆい)では、生産性向上に向けた原価管理やオペレーション改善、販促物の制作、マニュアル作り、販路開拓までトータルでサポートしております。現場で培った知見をもとに、あなたのお店のパートナーとしてお手伝いさせていただきます。